i-014  比金義明 新聞連載エッセー 資産のリスクマネージメントってなあに?
第1回 原稿(2001.7.2掲載)   リスクマネージメントってなあに?
執筆: 株式会社比金工務店 専務取締役比金義明
 みなさんは、リスクマネージメントという言葉をお聞きになったことはありますか?最近では、雪印の問題でよくこの言葉が使われていました。雪印の問題では、リスクマネージメントにおいて二つの不十分があったと考えられます。一つ目の不十分は、もちろん品質管理の分野におけるものです。原材料の仕入、保存、加工、出荷、出荷後の売れ残り品の回収とその処分、全ての過程で、リスクの想定とその対策が不十分であったと考えられます。みなさんは、この問題は従業員がパイプの掃除を怠ったことだけが原因だとお考えになりますか。そうではないと思います。本当のリスクマネージメントとは、従業員がミスをおかすこともあるというリスクもまた想定し、それを未然に防ぐ手立てを講じることなのです。更にそのチェックをもすり抜ける商品がありえると言うリスクさえ想定した上で、市場に出す前に検出することができるシステムを構築することなのです。そして、雪印のもう一つの不十分は、完全であると思われる品質管理を実行しても、それでも瑕疵のある商品を市場に出荷してしまうこともあるだろうというリスクを想定し、その対策を講じていなかったということです。テレビで連日報道されていたように、雪印商品を扱う代理店の困惑ぶり、雪印の従業員の工場での発言、そして、記者会見やエレベーターの前での社長や役員の発言は、御存知の通りです。不祥事の上に更に不祥事を塗り重ねてしまったのです。先程申し上げましたように、十分な品質管理の上にそれでもミスが生じてしまった場合の想定、患者さんへの十分な配慮、世論への配慮、そして従業員・代理店への配慮、どれをとっても不十分であったということは皆さんも感じられたことでしょう。しかし、これは雪印の社長や役員、従業員がことさら能力を欠いていたということなのでしょうか。そうではありません。何の準備もなくあれだけの大騒ぎになれば、誰だって適切な対応ができるわけはありません。つまり、あらゆるリスクを想定し、防止策を講じると共に、リスクに見舞われた場合のシナリオを準備しておく、リスクの影響を最小限にとどめる手立てを前もって用意しておくことがリスクマネージメントなのです。雪印の場合、商品回収の遅延、記者会見での発表内容の食違い、患者さんへの配慮を欠いた発言、その後の更なる品質管理のずさんさの表面化、リスクマネージメントが施されていた形跡は残念ながら見当たりませんでした。その結果、雪印は、トップブランドとしての信用の失墜はもちろんのこと、今後の経営の基盤さえ危ういものとなってしまいました。

 リスクマネージメントの重要性は、雪印のような製造業の品質管理とその後の対応策に限られたものではありません。私たち個人においても、中小零細企業においても、銀行や保険会社、ひいては政府・国家においても、もちろん賃貸不動産の経営者においても、絶対に必要な、自己保存と成長のための武器なのです。バブルのころオフィスビルをつくっても、テナントが見つからないなんてことはない。地価が暴落するなんて考えられない。こんなに親切ですぐにお金を貸してくれる銀行が手のひらを返したり、まして倒産してしまうなんて考えられない。大きな地震で自分の賃貸ビルが壊れるなんてありえない。私たちは、このようなたくさんの「ありえない」、「大丈夫だよ」という何の根拠もない安心の上に立っているのではないでしょうか。たとえば、バブルの頃、地価が下がるなんて誰も考えていなかった、そして今、地価が上がるなんて誰も考えていない。たとえば、最近本社ビルを売却して、家賃を払ったほうがよいと考える風潮が出てきました。つまり、資産を圧縮して総資産利益率を高めたほうがよいということです。地価が上がるというのはメリットにもなり、リスクにもなるのです。家賃が安いという現状がずっと続くのであればそれでもよいのでしょうが、もし、地価が上昇し、家賃が高騰したら、経営はあっという間に大きな影響を受けてしまいます。たとえば、サンフランシスコのシリコンバレーでは、オフィスの家賃が数年で数倍にもなり、住宅価格も同じように高騰しました。つい先日の話です。多分、苦境にあえいでいた1988年から1992年ごろのアメリカでは想定すらできなかったことでしょう。

 以上のように、私たちは、想定すらしていなかったたくさんのリスクに、実は見舞われ続けているのです。今回の私のエッセイでは、このリスクマネージメントを、賃貸不動産の経営を舞台として、論を展開し、今後のリスクマネージメント論の発展と、皆様の経営や生活の御参考にしていただければ幸いです。

 大家さん、大きな地震で御自分の賃貸マンションが壊れてしまったら借金だけが残ってしまいますよ。金利が暴騰したら、家賃収入だけでは返済できませんよ。住宅金融公庫が民営化され不良債権が整理回収機構に売却されたら厳しい取立てに合うかもしれませんよ。

 たくさんの「大丈夫だよ」を「もしそうなったら」に置き換えて考えていくことにしましょう。次回は具体的なリスクマネージメントとして大地震について考えてみます。

第2回 原稿(2001.7.9掲載)   リスクマネージメントってなあに?-----大地震
執筆: 株式会社比金工務店 専務取締役比金義明
 「大地震でマイホームや所有ビルが倒壊してしまったらどうしますか?」と言う問いにみなさんならどのように答えるでしょうか。 私は、この問いを数多くの方々に投げかけ続けています。最も多い答えは、「壊れるときはみんな壊れるんだからしょうがないよ」と言う答えなんです。これではリスクマネージメントどころのさわぎではありません。この答えは、みんなが同じ被害を受けるのだから、深く考える必要はないよと言うことなのでしょう。さて、それでは「みんな」とはどこまでを指しているのでしょうか。阪神・淡路大震災を例に考えてみてください。日本国民全員が被災したのでしょうか。そうではありません。あの地震で御家族を亡くされたり、マイホームを失われ苦しんでおられるのは、阪神・淡路のみなさんだけなのです。そして、阪神・淡路以外に暮らす大部分の日本人は、何の被害も受けていないのです。つまり、阪神・淡路の方々は、大きな精神的苦痛と経済的苦痛に苦しめられ続けていますが、その他の大多数の日本人は何の苦痛もないのです。従って、先程の「みんな壊れちゃうんだから」と言うのはまったく的外れな答えなのです。特に大地震による精神的苦痛と経済的デメリットは、その後の生涯をも左右してしまうほどのインパクトをもっているのです。

 さて、もう一つ質問をさせてください。もし、大切なお子さんを大地震で失ってしまった時に、それでもあなたは、「みんな同じなんだからしょうがないよ」と答えることができますか?私なら大変な悲しみの中でこう後悔することでしょう。「子供の命を奪ったのは、地震ではない。私だ。私が借金をしてでも、家の補強を行っていれば、子供は死なずにすんだんだ。」と。

 大地震に対するリスクマネージメントには二つの大きな主役があります。一つは、生命です。もう一つは資産です。経済的に高度に発展した社会では、生命だけが守られても、それでは全くもって不十分なのです。大地震に見舞われ、幸運にも家族全員が無事であったとしましょう。しかし、2年前に4000万円で購入したばかりのマイホームが倒壊してしまった場合、この家族は、なくなってしまったマイホームのために、残りのローンを毎月16万円以上、28年間に渡って返済し続けなくてはならないのです。これは、まさに生き地獄以外のなにものでもありません。つまり、マイホームに被害がなかった人と比較すると、今後28年間で、5376万円もの負担増となるのです。ましてや、これがマイホームではなくて、何億円もかけたような賃貸収益ビルであったとしたら、そのビルの大家さんは、もはや経済的には立ち直ることは不可能となるでしょう。

 それでは、このようなことにならないように、リスクマネージメントを施すこととしましょう。建築基準法どおりに一級建築士に設計をしてもらい、大手ゼネコンに工事をしてもらったから大丈夫、柱は他のビルより太いから、鉄筋がいっぱい入っていたから、だから私のビルは大丈夫なんて、それではリスクマネージメントになっていませんよ。まず、建築基準法は大まかにわかりやすく表現すると震度5までは、被害なし、震度7でひっくり返らなければ、よし、という計算をしているに過ぎないのです。つまり震度5を超える地震では、建物はもう使えなくてもいいから、生命だけは何とか守ろうと言うことなのです。建築基準法どおりに間違いなくつくられたとしても、大地震のあと、マイホームを失い、ビルを失うという悲惨が無数に発生することは当然の帰結なのです。さて、それでは、震度5を超えるような大地震でも再利用できる建物をつくる技術はあるのでしょうか。あります。私も数年前に自身で設計・施工をして自社ビルを建設しました。2億3千万円のローンを組み、自己使用部分以外の賃貸家賃収入で返済をできるように計画を立てました。もしこのビルが大地震で倒壊したら、私は経済的に再生することは、一生をかけても不可能です。そこで、震度7の大地震に見舞われても、倒壊する可能性を最小化し、補修を施せば再利用できるという独自基準を設定し、それに合わせた構造システムを採用しました。もちろんコストはアップしましたが、全体の4〜8%程度のコストアップに抑えることができました。更に、大地震で不良債権となる可能性が極めて高いビルと、大地震後も返済を続けることができる可能性が極めて高いビルと、債権の格付けを差別化することを銀行に提言し、ローン金利の低減メリットを引き出すことにも成功しました。また、地震・火災保険料の減額も実現することができました。これらの金融メリットによって、コストアップした分は10年以内に回収でき、地震がこなくても、経済的メリットを享受することが可能となりました。リスクマネージメントには、当然コストがかかります。しかし、リスクに見舞われたときには、その被害を最小化すると共に、リスクに見舞われなくても、リスクマネージメント効果を発揮することが、プロデュースの仕方によっては可能となるのです。これからは、リスクマネージメントを行っていない企業や個人は、行っている企業や個人と同じフィールドに立つことはできなくなる、つまりリスクマネージメントを行っていないと大きなハンディを、リスクに見舞われる前から背負うことになる、そんな時代がすぐそこまできています。さあ、準備をはじめましょう。

 次回は、多発する共同住宅での性犯罪について考えることにします。

第3回 原稿(2001.7.16掲載)   リスクマネージメントってなあに?-----犯罪の温床と化した共同住宅
執筆: 株式会社比金工務店 専務取締役比金義明

 みなさんは、建築基準法第一条を御存知でしょうか?大多数の方が御存知ないと思いますので、ここで確認してみたいと思います。建築基準法第一条(目的)「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。」 と記されています。つまり、最低限の基準を定めているに過ぎないのです。前回お話させていただいた、耐震性も、最低限の基準ですから、大地震に見舞われた場合には残念ながら、大部分の建物が、法律通りにつくられていたとしても、壊れてしまうのです。それでは、今回のテーマである犯罪に関しては、建築基準法はどのような最低限のルールを定めているのでしょうか。驚くべきことに建築基準には、最低限のルールどころか、防犯対策は一切記述されていないのです。それどころか、火災時の非難に重点をおき過ぎて、つまり、逃げやすくすることのみに重点をおき過ぎて、あらゆるところを開放せよという指導を行ってきたために、犯罪者がより進入しやすい、そして犯行を行いやすい環境を提供することになってしまったのです。そして、その現象が最悪にも、最も安全であるべきマンション・アパートなどの居住施設において発生してしまっているのです。ここで、マンション・アパートなどの共同住宅における火災と犯罪の現状を明らかにしてみたいと思います。平成10年にマンション・アパートなどの共同住宅において火災で亡くなられた方は、159人、それに対して、マンション・アパートなどの共同住宅において強姦・強制わいせつの被害に遭われた女性や子供は、認知件数だけで1400人を超えています。共同住宅における強制わいせつは、平成10年の813件から、平成11年には約40%増えて、1127件に達しています。強姦や強制わいせつは、その犯行現場として、公園・道路・ビルの谷間・暗がり・林野・車の中等あらゆ場所があるのですが、強姦は全認知件数の31%が、共同住宅で発生しているのです。これは、建築のつくり方が、非難をしやすく開放しすぎたために、共同住宅の廊下、避難階段、窓先空地、エレベーター、自転車置き場、駐車場、室内など共同住宅のあらゆる場所を、犯罪者にとって進入しやすい、そして犯行を行いやすい、あえて厳しい言い方をすれば、強姦や強制わいせつに最も適した場所にしてしまったのです。

 さて、みなさんは奥様やお子さんが危険にさらされるような場所が、お住まいのマンションやアパートにないこと確認されていますか。マンションに不審者の侵入を防ぐオートロックは設備されていますか。避難階段や廊下に、不審者が簡単に進入することができないような措置は施されていますか。今すぐにチェックをはじめてください。もし、不安な場所があったら、専門家に相談し、早急に改善策を作成、実施してください。ただし、建築基準法は未だ防犯に対してのルールを持たないばかりか、開放路線をとり続けていますから、防犯対策が建築基準法違反となってしまうおそれがありますので、行政にも相談をしてから、実行してください。

 大家さんはどうですか?大家さんが所有するマンションやアパートには、オートロックは設備されていますか?廊下や避難階段は犯罪者が侵入できないようになっていますか?後ろの邪魔にならないところに追いやってしまった廊下や階段は、犯罪者の犯行現場にならないように工夫していますか?もし、心配な場所があったら、すぐに専門家に相談してください。大家さんの所有されるマンションで入居者が強姦や強制わいせつの被害に遭われるようなことがあってからでは遅いのです。もしそんなことになったら、入居者にとってもその御家族にとっても、一生取り返しのつかない悲しい事件になってしまいます。もちろん大家さんにとっても、強姦や強制わいせつの犯行現場となってしまったマンションは、入居率は下落し、家賃も暴落する危険性さえあるのです。想定されるリスクに対して、適切な回避手段を講じておくことが、リスクマネージメントの最も重要な第一歩なのです。そして、リスクマネージメントレベルの高い、安全で安心なマンションには、家賃が多少高くても大家さんから見て安心な入居者が集まる、逆に言うと、リスクマネージメントレベルの低い、危険で不安なマンションには家賃を下げても、大家さんから見て安心な入居者は決して集まらない、そんな時代がすぐそこまできています。ここでいう、大家さんから見て安心な入居者とは、他の入居者に迷惑をかけたりしない、素行の良い、そして、家賃の滞納を絶対にしないような入居者ということです。安心な良い入居者を集めることも大家さんにとっては重要なリスクマネージメントとなるのです。良い入居者を集めるためには、良い環境を提供しなくてはなりません。提供すべき環境とは、賃貸する部屋の中だけでなく、エントランス・廊下・階段・駐車場・駐輪場・エレベーターなどの共用部分もすべて入居者にとっては重要な環境となるのです。さあ、大家さん、御自分の所有するマンション・アパートのリスクマネージメントを開始しましょう。

 次回は、資産の陳腐化リスクとライフサイクルコストに関してお話いたします。

第4回 原稿(2001.7.23掲載)   リスクマネージメントってなあに?-----資産の陳腐化リスク
執筆: 株式会社比金工務店 専務取締役比金義明

 「第1回リスクマネージメントの概要」「第2回大地震等災害リスク」第3回「性犯罪等犯罪発生リスク」と、大家さんを取り巻くリスクについてお話してきました。今回は、外部からのリスクではなく、内部、つまり、大家さんの資産そのものに潜むリスクについてお話することにします。災害や犯罪は突発的に発生するリスクですが、資産の陳腐化リスクは、少しずつ、しかし確実に、今も、大家さんの資産に胚胎し、増大しているのです。


 資産の陳腐化には2つの側面があります。一つは老朽化、もう一つは、パラダイムの変換による資産価値の暴落です。一つ目の老朽化に関しては、適切なメンテナンス計画の下、タイムリーにメンテナンス行為を実行していくことによって、老朽化を防ぐことができます。問題なのは2つ目のパラダイムの変換による資産価値の暴落というリスクです。パラダイムというのは、言葉で明確に定義することは難しいのですが、言ってみれば、時代を支える考え方、ものの見方、根源的な価値観とでも言うものでしょうか。つまり、大家さんが多額の投資をして手に入れた賃貸マンションやアパートが、その物質的な耐用年数を完する前に、ライフスタイルや価値観の変化によって、借りたいという人がいなくなってしまうことなのです。そして、その変化のスピードがますます速くなっているということが更にリスクを増大させています。

 簡単な例では、トイレと浴室の一体化です。建設費を低減することができ、更にこれからはアメリカンスタイルで一体型が主流になると、誰が勧めたのかわかりませんが、かなりの数の賃貸マンションが、ある時期、トイレと浴室を一体化してしまいました。ところが、不動産屋さんに行っても、インターネットで検索しても、まず最初に「家賃の御予算は?」ときかれ、そしてその次に、「トイレとお風呂は別々のほうがいいですか?」ときかれます。なんと80%以上の人がトイレとお風呂は別々がいいと答えるそうです。つまり、一体化してしまったマンションは、チラシさえ見てもらえないのです。

 また、バブルの頃、賃貸マンションも、これからは豪華で、ウサギ小屋ではなく、広いスペースのものでなければ、借り手が見つからなくなると、設計事務所もゼネコンも、そして大家さんも、みんな、賃貸マンションを大型化・高級化しました。住宅金融公庫も、賃貸住宅の一戸あたりの面積をできるだけ大きくするような政策をとってきました。あれから10年、予測は全く外れ、賃料よりも安い返済額で分譲マンションが売出され、賃貸住宅派は、軒並み分譲マンションや建売住宅に集い、持論を曲げて持ち家派に転換してしまいました。更に、デフレ環境の中、所得の下がった借り手は、多少狭くても、家賃の安い賃貸マンションに引越しをしていきました。周りには、次から次へと、地価と建設費が下がったチャンスに、ライバル賃貸マンションが建ち上がってきました。悲惨なのは、大型・高級賃貸マンションをつくってしまった大家さんです。建てて5年や10年で、借り手が見つからない、つまり、30年ローンの大半が未返済の段階で、商品である賃貸マンションが、時代の変化から取り残され、存在そのものが陳腐化されてしまうような状況は、恐怖さえおぼえるようなリスクとなってしまいました。もちろん、全ての、大型・高級賃貸マンションが、借り手を失ったわけではありません。100人の借り手に対して、100戸の賃貸マンションしかなければ、借り手は必ず見つかります。借り手が150人で、100戸なら、大家さんのほうは、全く心配ありません。大家さんたちが困るのは、借り手が80人に減ってしまったが、100戸の賃貸マンションがある場合です。20戸は必ず空室となります。くじ引きで空室マンションが決まるわけではありません。80人の借り手が、順番に自分の借りたいマンションを決めていくのです。残ったマンションが、空室となります。そして、全ての賃貸マンションが、平等に20%ずつ空室になるのではなく、10戸全てに借り手がついいるマンションもあれば、10戸全てが空室になってしまうマンションもあるのです。満室のマンションと空室だらけのマンションの違いは、時代を超えて存在するニーズを基本に据えつつ、それぞれの時代の価値観も柔軟に取り込め、変更していけるようなシステムを備えた賃貸マンションなのではないでしょうか。このような賃貸マンションの詳細に関しては、いづれ、これまでの分析・研究・開発の成果を発表させていただきます。次回は、経済変動・社会システム変動リスクについて、お話します。

第5回 原稿(2001.7.30掲載)   リスクマネージメントってなあに?-----経済変動リスク
執筆: 株式会社比金工務店 専務取締役比金義明

 日本の経済が低迷して10年が過ぎました。この間、橋本政権が行政改革・財政再建を掲げてこけた後、今度は、経済再生が先だと、小淵・森政権が、財政拡大戦略に変更して、またこけて、今度は、小泉政権。さてどうなるんでしょう。まあ、他の総裁候補や前の総理よりは大分ましかと、支持しちゃえ、なんて。その実、最後の手段、構造改革さえすれば、日本が本当に再生するなんて、本気で信じられるほど日本の状況は楽観できない瀕死の状態であることは、気づかないこととして、「たまには痛みもいいんじゃないの」ってなのりかな。これこそ、リスクマネージメントがあまいと言わざるを得ません。それでは、小泉改革が成功するのか、失敗するのか、リスクマネージメントとは、その両方を想定し、二つのシナリオを策定しておくことなのです。

 リスクのとりは、経済です。バブル崩壊後、会社が倒産したりリストラされたりで、住宅ローンの返済ができなくなったサラリーマン、バブルの時に立派なビルを建てた後、見込んでいた家賃収入が暴落しビルを失ったオーナー、その他経済変動によって、大きな痛手を被ってしまった人は、数知れません。多分、みんなシナリオを一つしか準備していなかったのでしょう。会社は永遠で、まじめに働いていれば、住宅ローンは返せるな。地価は上がり続け、ビルを持てば、家賃収入でビルの返済のみならず、お小遣いまで出ちゃうな、なんて。給料が下がることも想定して、車も買っちゃおうと思ったけど、住宅ローンのこともあるから、定期預金を少し増やしておこう、家賃収入が減少することも想定して、積立を増やしておこう。景気は循環しているのです。あんなに好景気だった日本が今はデフレスパイラルの真っ只中にいる。あんなに不景気だったアメリカが好景気の絶頂に至り、今また調整局面に入っている。お金なんて持っていてもしょうがないから、どんどん値上がりしている株や土地を買っておこうというのがかの有名な「財テク」だったのではないでしょうか。実は今もバブルなんです。土地・株バブルではなく、現金バブルです。5000万円で5坪しか変えなかったのに、今は25坪も買えちゃう。地価が5分の1に暴落したと見るのが「土地バブルの崩壊」論者、お金の価値が5倍になったと考えるのが「現金バブル」論者、土地バブルの崩壊を嘆いている間に、今度は現金バブルが崩壊する。そうなると、今度は、現金をたくさん持っている人が現金バブル崩壊に巻き込まれる。そのかわりに不動産を持っていた人は、不動産バブル再燃で資産価値が上昇する。その繰り返しです。

 バブルの頃、地価が暴落するなんて言ったら、笑われたかもしれない。今、地価が値上がりするなんて言ったらやっぱり笑われるだろう。だけど、どちらのシナリオも確実に想定しておくのがリスクマネージメントです。「地震なんて起こんないよ」から「地震が起きた場合は」へ、そして、「地価はもう上がんないよ」から「地価が値上がりした場合は」へ。現金の価値が暴落すれば、土地もマンションも、家賃もみんな高騰する。昨年サンフランシスコの不動産市況を調査してきましたが、オフィス家賃も、住宅価格も、ここ数年で2倍か3倍に暴騰していました。日本が地価の暴落に苦しめられているまさに同じ時にです。現金も土地もマンションも住宅も株式も国債も、全て資産の一形態なのです。それらの相対的価値バランスは、常に変動しているし、あるいは変動のマグマが蓄積されているのです。全ての資産のバランスを、相対的価値の変動をシミュレートし、ポートフォリオを策定することが、経済変動リスクに対する唯一の手段です。そしてそれぞれの資産は、経済変動以外に価値が変動しない本物を選択しておくことです。

 小泉改革は残念ながら、小泉さんや竹中さんが言うような、根本的な手術ではありません。言ってみれば、瀕死の重症患者に、早寝早起き、間食を控えて食事療法を勧めるようなものです。構造改革はもちろん必要です。しかし、外務省の機密費の無駄遣いを減らしても、大蔵官僚がノーパンしゃぶしゃぶにいかなくなっても、銀行が行員の給料を下げ、リストラを進めても、日本経済の瀕死の病状は残念ながら改善されません。なぜなら、先程申し上げましたように、さまざまな資産の相対的価値バランスが大きく崩れてしまったのです。しかし、これも市場メカニズム(政府や企業や個人の戦略ミスも含めて)が是正してくれます。もちろん戦略ミスでなく適切な戦略を選択遂行できればもっと早く再生できるのですが、なかなかそう簡単にはことは運ばないようです。いずれにしても、更なるデフレとハイパーインフレの両方の戦略シナリオを策定することが、経済変動リスクに対応するためのリスクマネージメントとなります。

 
マイホーム・ビル等の建築・リフォームをお考えの方に
比金工務店の会社案内・作品集を御希望の方には、無料でお送りさせていただきます。
下記の項目に関して御記入いただいたメールを送信していただければ、後日郵送にてお送りさせていただきます。なお、メールをいただいた方には、作品集の送付以外、営業行為等は一切いたしませんので、御安心ください。

お名前  :
郵便番号 :
御住所  :
コメント  :
Mail to HIGANE 作品集・会社案内希望

お電話でのお問い合わせは、03-3765-5001にて承っております。
御遠慮なくお問い合わせください。

ホームへ
Copyright 2011 Higane Construction Co., Inc. All Rights Reserved.                       Photo by URBAN ARTS
■ Rimson トップページ ■ 賃貸併用住宅を建てる ■ 研究所(レポート・論文) ■ ローンシミュレーション
■ Rimsonについて ■ デザイナーズマンションを建てる ■ 動画 誰でもわかる建築講座 ■ リンク
■ 会社案内 ■ 店舗・オフィスビル・公共建築 ■ 作品集 RC造・鉄骨造 ■ サイトマップ
■ お問合せ ■ リフォーム・リノベーション ■ 作品集 木造  
■ メールを送る ■ B to B コラボレーション ■ 作品集 店舗・オフィス・リフォーム  
■ ブログ

■ デザイナーズマンションを借りる

■ ギャラリー 模型・パース